どうも!opporです!
opporは、現在、聾学校(聴覚特別支援学校)に勤務しているのですが、ぜひ、お時間が許せば見てほしい番組(YouTubeでも見れる。)があります。
それが、こちら。
『ぼくたちのサイン
―難聴のエースと仲間たち 最後の夏― 』(2014年8月14日(木曜)(NHK)放送)
Reの理念である“スポーツを通して自分をつくる”という理念と深く通じるものがあります。(。・ω・。)
舞台は、島根県 益田東高校野球部。( 甲子園にこれまで3回出場した事があり、県大会では常に上位に入る実力校。 )登場するのはエース、廣中蒼磨(ひろなか・そうま)さんです。
蒼磨さんは、先天性の難聴を有し話す事にも障害がありますが、ストレートと多彩な変化球を操り、抜群のコントロールが武器で、チームの不動のエース(投手)です。
チームのコミュニケーションは、簡単な手話と「指文字」です。
指文字は、50音を1つずつ表すもの。チーム全員が使いこなし、エースを支えてきました。
この番組は、弱さを克服し、本当のエースになれるのか。チーム一丸となって甲子園を目指す、最後の夏、エースと仲間たちの絆の物語です。
蒼磨さんは、奈良にある聾(ろう)学校から進学してきました。
練習中は白いヘルメットをかぶり、いつ飛んでくるか分からないボールから頭を守っています。
監督がチームを集めて指導する時も、誰かが必ず指文字で伝えます。
試合中、とっさの場面でも対応できるよう、チームは合図を作っています。
例えば、【一塁ランナーの盗塁を防ぐ場面。】
ランナーが走り出すと、キャッチャーが即座に立ち上がり、身振りで指示。
二塁へすぐ送球できるようにしています。
声が聞こえなくても、蒼磨さんと野手は指示を出し合う事ができます。
チームはさまざまな工夫で蒼磨さんを支え、蒼磨さんはエースとしてチームを支えています。
そんな蒼磨さんは、奈良聾(ろう)学校中学部のときに、地元の硬式野球チームに入ります。
ピッチングの実力は認められたものの、エースを任される事はほとんどありませんでした。
ほかの選手の言葉が聞こえず、蒼磨さんから指示を出す事もできなかったためです。
背番号1には遠く及ばないまま、3年間が終わってしまいました。
野球を続け、エースになりたい。
進学先を探す中で訪れた、益田東高校の雰囲気が気に入り、はるばる島根の高校の入学を決めました。
仲間たちとコミュニケ-ションできるようになり、初めてエースに選ばれました。
夏目前の6月初めの公式戦では、9回ツーアウトから5点を取られ逆転負け。打線の活躍を、エースが台なしにしてしまいました。
その翌日。
蒼磨さんは寝坊して朝練をサボり、学校にも遅刻しました。
監督:
『蒼磨!』
(放課後、見かねた監督が蒼磨くんを呼び出しました。)
監督:
『結局お前、学校でも自分のやらなあかんことせんで、ほんで試合でほって(投げて)、ほんで「負けたの悔しい」って。
お前、ダルビッシュちゃうで。
お前、耳聞こえへんからって、人に頼ってばっかで、自分何もしてないやないか。甘い。』
蒼磨:
『あああ。オー!オー!オー!』
(声を振り絞り、監督のノックを受けます。)
監督:
『お前は、自分で自覚を持つ。じ、か、く。(ゆび文字)』
蒼磨:
『あ!』
監督:
『投げるだけが、が、エース違う。』
このとき、蒼磨さんは、もしエースじゃなくなったら、野球が下手になったら、みんなが僕のことを信頼してくれなくなるかもしれない…という不安を抱えながらも、どうすればいいのか分からないまま、夏の大会まで40日を切っていました。
ある夜。
ルームメートの中林くんと菅野くんが、蒼磨さんに声をかけました。
中林:
『お前、(人の指示を)いつも待ってるやろ?
お前が、もっとピッチング終わったら、誰かに自分から聞きに行って、「どうやった?」とか、「今日(ボールが)高かった?」とか、聞きに、もっと積極的に聞きに行け。
お前、耳聞こえないの関係ない。
試合で投げてんねんから、耳聞こえないの関係ない。
同じ、全員。OK?
俺も出たいけど、(ケガで)出られへんくて、つらいけど、チームが勝ったらそれでいい。
でもお前が、はぶてたり(いじけたり)言いわけしたりしたら、出られへんやつのこと、人に対して、申し訳ない。
もっと楽しくやれ。
お前ピッチング、監督見すぎ。
キョロキョロしすぎ。
ピッチングは、バッターに対してケンカしてんねんから、おどおどしない。
もっと強く強く。』
菅野:
『そうやねん、出てないねん俺。
これ(打撃)しかないから、俺もこいつ(中林)も、打てんときだってあんねん。
お前たちピッチャーを助けきれないけど、それでも、お前たち頑張って投げてるから、助けてあげたい気持ちは、お前ら以上にあるから。
投げてみ、全力で。
練習だからいいやとかは、もういらん。いらん。
全部投げろ。』
そして、迎えた最後の夏。
島根大会初戦。
相手は、去年県大会で準優勝した強豪校です。
9回を2失点。投げきりました。
その裏、1点を追う益田東ですが、一歩及ばず試合終了。
初戦敗退。
早すぎる、夏の終わりでした。
野球部を引退する蒼磨さんに、監督は言葉をかけました。
監督:
『お前これから、耳みんな聞こえる、お前聞こえない。
その世界で、頑張れ。
負けるな。』
蒼磨:
『あ!』
監督:
『俺、背小さい。お前耳聞こえない。同じ。』
蒼磨:
『あ!』
監督:
『長谷川、顔長い。お前耳聞こえない。同じ。』
蒼磨:
『あ!』
監督:
『自分は、とくべつではない。』
蒼磨:
『あ!』
監督:
『よくがんばりました。』
蒼磨:
『ありがとうございました。』
(監督と蒼磨さん、握手)
ピッチングの実力は認められたものの、エースを任される事はほとんどなく背番号1には遠く及ばなかった中学校時代に比べて、良き師に出会えた高校時代が、どれだけ蒼磨さんの人生の転換になったことでしょうか。
指文字50音と簡単な手話を使いこなしたチームメイトの姿、最後まで蒼磨さんと向き合った指導者(監督)の姿に頭が下がるばかりです。
ぼくたちのサイン
―難聴のエースと仲間たち 最後の夏―
2014年8月14日(木曜)(NHK)
出演者
廣中 蒼磨さん
益田東高校野球部のみなさん
語り
森川 葵さん
(文・引用 http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/summary/2014-08/14.html )